「邨」は「村」の古字で、当時は「ここは木彫りの店ばかりで、食堂なんて見つからない。みんな木しか食べないのだろうか」という笑い話を言う客もいた。豪快でさっぱりとした気質のお母さんである雪(シュエ)さんは先陣を切って店を開き、擂茶(レイチャ)を中心とした軽食や農業特産日の販売に加え、民宿の経営を始めた。2004年に田媽媽(ティエンママ)に加盟してから、嫁ぎ先の客家料理を提供するようになり、大衆食堂へと転換した。
雪さんによれば、「客家人はしょっぱい料理が好きで、甘いものは食べないので、料理に砂糖を使うことはほとんどない。また、客家人のほとんどは山岳地域に暮らしており、平地に降りて買い物をするのも面倒なので、客家のお母さんたちはみな自給自足の精神を発揮して、干しブドウ、からし菜を塩漬けして乾燥させた梅乾菜、桔醤(ジージャン)などを自分たちの家で作ってきた」という。
「梅干扣肉」(梅乾菜と豚バラ肉の煮物)、「薑絲大腸」(豚大腸の生姜炒め)、「客家小炒」(客家風炒め物)、「蘿蔔乾豬肉湯」(干しブドウと豚肉のスープ)はどれも本格的な客家の味を伝えている。料理は季節によって変わり、「炒桂竹筍」(タケノコの金色炒め)や「鹹蛋苦瓜」(苦瓜と卵の炒め物)はともに食欲を刺激して、ご飯が進むおかずとなる。