台湾南端の屏東は、農業資源が豊かで、台湾の野菜や果物の重要な産地となっている。屏東を代表する農作物の1つがパイナップルである。
銘泉生態休閒農場 食物の産地かつ生物の生育地
県道185号沿線にある銘泉生態休閒農場では、2世代にわたりパイナップルだけ栽培してきたが、農場のオーナーの呉(ウー)さんと妻の美蓮(メイリエン)さんは共に、周囲の豊かな生態環境を生かした、人と自然の生態系が共存できる秘境を構築することを決心した。現在ここでは、連綿と続くパイナップル畑を眺め、豊かな自然に恵まれた山間の環境を楽しみ、新鮮なパイナップルを収穫し、パイナップルケーキやパイナップルピザの手作イベントに参加して、休日を満喫するのに最適な場所となっている。
地上の楽園で生態観察
銘泉内の生態池は農場の生態の起点となっている。設立後、間もなく、最初の来場者として台北カエルが迎えられた。台北カエルは生物と環境が共存共栄する重要な里程標となった。その後、小動物たちが互いに誘い合うように続々と農場にやって来て、ハクビシン、ゴシキドリ、アゲハチョウが見られるようになり、イノシシが畑のパイナップルを食い散らかしてトラブルを起こすことも珍しくなくなった。
農場の一角では、パイナップルの冠芽(かんが)が一株ごとに草地の上に頭を出している。そこでは、一般的に食されている金鑽パイナップル、小ぶりでかわいい香水パイナップル、観賞用の五彩パイナップルといった様々な品種が栽培されている。パイナップルの種類は葉のサイズと色から区別できる。
農場の中央に置かれたパイナップルの形をした建物はパイナップルのマジックハウスで、明泉の人気スポットとなっている。マジックハウスは伝統的な工法で構築されており、主な骨組みは竹編みで、地元の籾殻、石灰、麻の繊維が使用されている。注目すべきなのは、マジックハウスの内部にカエルの成長過程を描いた絵が刻まれており、銘泉の生態農場への推移の記録ともなっている。
楽しいパイナップル狩りに、おいしい手作りピザ
明泉に来たなら、パイナップル狩りは外せない。パイナップル狩りでは、パイナップルの葉でけがをしないように長袖と長ズボンを着用する。また、農場からは、来場者に1日農民であるという感覚を体験してもらえるように麦わら笠と手袋も支給される。
最初の作業は、気に入ったパイナップルを探すことである。パイナップルを選んだら、パイナップル上部の冠芽をつかんで、軽く折り曲げるだけで収穫できる。呉さんは近くに来て、皮をはがすのを手伝ってくれるので、パイナップル狩りが辛くなることはない。周囲は皮をむいたパイナップルの香りであふれ、口に入れると、パイナップルの汁が口いっぱいに広がる。
オーナーは、パイナップルが大嫌いだったある子供の話を聞かせてくれた。その子供はパイナップル狩りのイベントに参加し、もぎたてのパイナップルを食べた後、パイナップルの味が大好きになって、毎年シーズンになると、母親に頼んでパイナップルを一箱注文してもらい、今ではすっかりパイナップルの虜になっているという。
パイナップルの収穫の後は、手作りパイナップルピザの準備のために、すぐに小さなキッチンの教室に移った。銘泉ではピザの生地に紅藜(レッドキヌア)を加えている。紅藜には必須アミノ酸と食物繊維が豊富に含まれているので、紅藜を加えることで、生地の栄養価が大幅にアップし、エレガントなピンク色の生地ができあがる。
生地を伸ばしてから、ケチャップを塗り、材料とチーズをトッピングするだけの簡単な作業だが、とても楽しく、紙に絵を描いて自分だけの芸術品を制作しているような気持ちになる。次に、オーブンに入れて10分間焼くと、サクサクしておいしいいピザが完成する。
ピザ作りを終えて、ガラス張りの建物に行くと、甘酸っぱく、爽やかな味の明泉特性のパイナップルジュースやコーンスープが提供される。このとき、焼きたてもピザも運ばれてくるので、パイナップルジュースやコーンスープを合わせて、豪華なパイナップルのごちそうになる。食事は魅力的な山の景色を臨みながら楽しめる。運がよければ、カンムリワシが空中を旋回しながらパイナップル畑を監視しているのを見られる。屏東のオーガニックツアーの最初の目的地は、おいしいメニューと大自然に囲まれながら、ここで満足度満点の一区切りとなった。
大花農場 バラのワンダーランド(11月~翌年4月)
明泉から車でわずか40分の距離にある大花農場は、きらめくルビーのような宝石とも言える魅力的なバラを栽培している。大花農場のバラがほかと異なるところは、観賞用だけでなく、食用としても使えることである。有機栽培の採用で、バラを調理しても安心して食べられ、残留農薬を気にする必要はない。
花びらのジャムとロマンチックなチョコレート作りでバラを体験する
大花農場への最初の旅は、農場のバラを使って高い香りの甘い花びらジャムの手作りに参加することだった。最初にスタッフと共にバラ畑に入り、ジャム作りに必要なバラを選んだ。
摘み取ったバラを洗って水気を取り、鍋に入れて、砂糖、りんご、レモン汁を加えて、粘りがでるまで煮込むと、バラの花びらのジャムができあがる。ジャム作りはそれほど難しくはなかった。花びらのジャムは甘酸っぱく、上品な花の香りがするので、ヨーグルトやトーストにかけると、おいしいアフタヌーンスイーツになる。
次に体験するのは、最近開発されたばかりのバラのポリフェノールチョコレートの手作りである。これもそれほど難ししい作業はなかったが、完成したチョコレートはとてもきれいで、食べるにはもったいないほどだった。まず、鍋でホワイトチョコレートを湯煎し、チョコレートを溶かして、大花農場自家製のバラのポリフェノールパウダーを加えてから、乾燥したバラの花びらをチョコレートの型に入れて、溶かしたチョコレートを注ぎ、冷蔵庫で15分から20分冷やすと、一口サイズの精巧なバラのポリフェノールチョコレートが完成する。口に入れると、チョコレートのコクとバラの香りの両方を味わえる。
丁寧な作業が伝わる農場のメニュー
ツアーの最後は、バラを使った特色あるメニューを味わうことである。海苔の代わりにバラの花びらを使ったバラの巻き寿司、心が温まるバラの鍋料理、きらびやかなバラの料理など、どれも食べてみたいと思うメニューばかりである。
豪華なバラの鍋料理のベースは豆乳とレモンの葉で、食べる直前に新鮮なバラの花びらを加えると、白いスープがラベンダー色に変わり、バラの心地よい香りが周囲を満たす。その後、農場で栽培された野菜やスライスした肉を加えて煮込でから口に入れると、上品なバラの香りが口腔に広がり、なめらかな食感を楽しめる。また、たっぷりの野菜もその役割を十分に果たしている。野菜はすべてバラ農場の畑の隣で栽培されたものなので、健康的で、安心して食べられる。
アフタヌーンティーを楽しんでも、まだ時間があったので、大花農園の売店に足を運んでみた。棚の上にはスキンケア商品からスナック菓子までバラを使った多数の商品が隙間なく陳列されていた。農場では、100台湾元消費すると、バラを1本摘み取ることができるサービスを提供しているので、消費した金額を計算して、何本のバラを持ち帰られるか考えるのも楽しい。
屏東では銘泉生態休閒農場や大花農場の他にも、乾坤有機生態休閒農場や鴻旗有機休閒農場などで、非常に多くの農民が消費者に安心して遊んだり食べたりしてもらえるように、有機栽培にこだわって土地と生態を守ることに黙々と取り組んでいる。家族一緒に食農教育と親子旅行を体験できる屏東の有機農場を訪れて、宝物探しを楽しんでほしい。