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桃園市

土地×スローライフ×持続可能性 大渓農村の生活哲学

  大漢渓に沿って発展した大渓の町は、独特の文化と風格を備えている。古い町並みが続く老街を歩くと、清朝時代の古い建物や、精巧な石の彫刻が施された日本統治時代のアーチを目にできる。遠くには白く煙が幾筋も空に立ち上っている。これは豆腐職人たちが地道に大豆を蒸して豆腐を作っている何よりの証拠である。老街には煮込み豆干(ドウガン)を香りが充満しているため、豆干料理を思わず注文したくなる。

  老街を過ぎ、康荘路を通って石門ダムに向かって進むと、康荘休閒農業区に到着する。沿道の風景は古い建物から緑の水田へと変わり、眼前には息を呑むような田園の景色が広がる。そこは老街のにぎやかさとは対象的に、この世界とは隔絶された平和で穏やかな場所である。同農業区では素朴な田舎暮らしを体験し、季節ごとに変わる家庭料理を味わえる。大溪で通常のツアーとは異なる体験をしたいと思うなら、この農業区は絶対に外せないスポットである。
  康荘休閒農業区では、地元住民、産業、文化をつなぐ有機的集落として、「生産」、「生活」、「生態」の3つの理念が融合され、古代中国の学者陶淵明が描く桃源郷が実現されている。ここでは、様々な果物や野菜の栽培を理想とする人もいれば、産業や文化の継承を決意している人もいるが、全員が共通の目標として、持続可能は土地と文化の継承を望んでいる。康荘休閒農業区は設立以来、桃園市の重要な農業集落となっており、食農教育の重要な拠点ともなっている。では、一緒に康荘に潜入して、その中にある生活哲学についての理解を深めよう。

📌【康荘休閒農業區】
住所:桃園市大渓区康荘路三段671巷655-1号
電話:0980-211492

職人による木工アートと食文化の出会い

  三和木芸工作坊は当初、主に神卓や太師椅を作製していたが、社会や家族構成の変化と共に、そうした製品の需要は減少し、小型の木製家具が多く作られるようになった。同工作坊は時代の流れに合わせて、日常生活向けの木工製品の作製に注力している。現在、工作坊は三代目の店主に引き継がれ、木工職人の精神を継承するため、当初の「受託生産工場」から「観光工房」に変貌し、手作り用の様々な木工製品を提供している。
  三和木芸では「豆之旅」という特別ツアーを開催している。そのツアーには、伝統的な木工芸術に大渓の食文化が取り入れられているので、親子やカップルで楽しむのに非常に適している。最初に、大工職人が柳材を切断したり、穴を開けたりして、細かい部品に分ける実演を披露する。その後、スタッフの指導に従い、伝統的な「ほぞ接ぎ」の技法を使って小さな部品を組み上げると、木の香りのする豆腐の型が出来上がる。手作りの型をじっとながめていると、達成感が湧くだけでなく、木工が好きになってくる。これは工作坊が手作りイベントを開催している狙いでもある。同工作坊では、こうした体験を通じて木工の精神と、その背後にある何世紀にも渡って受け継がれてきた歴史を来場者に体験してもらうことを願っている。どの人の体内にも木工のDNAが受け継がれており、それが顕在化する適切な瞬間を待っているだけなのかもしれない。

  型の完成後は、豆腐の専門家から伝統的な平豆腐の作り方を伝授される。作業の前に、出来たばかりの型は水で洗ってきれいにし、熱湯に入れて消毒し、取り出して熱を冷ましておく必要がある。作業は豆腐の材料の準備から始まる。材料を準備したら、大溪の濃厚な豆乳を鍋に移し、弱火で煮るが、このとき細心の注意が必要なのは、鍋が焦げないように、また温度が高くなり過ぎないように、絶えずかき混ぜ続けることである。加熱後、用意しておいたにがりを4回に分けて加えると、豆乳が花びらの形のように凝固し始める。次に、型にガーゼを敷き、固まった豆腐を詰めて、ガーゼの端で中央を包み込む。最後に、ふたをして余分な水分を取り除いてから、しばらく寝かせると、濃厚な味の伝統的な大渓豆腐が完成する。作りたての豆腐は味付け不要だが、醤油を少し垂らして食べても、豆腐の旨みを十分味わえる。

📌【三和木芸工作坊】
住所:桃園市大渓区康荘路三段671巷36号
電話:(03)388-1870

イベントも食事も最高の好時節

  大渓の老街から車で10分ほどの距離にある「好時節休閒農場」は、生活と生態が融合した桃源郷である。農場内には古き良き農村の風情が色濃く残っており、春になれば田植え、春から夏にかけてはタケノコ掘り、米の収穫時期には稲刈りが体験できる。農場では異なる季節ごとに様々な農業イベントに参加できる。多様な体験イベントが用意されているので、家族連れで一日農家となって、素朴な田舎暮らしを経験できる。

  養鶏は好時節休閒農場の大きな特徴となっており、鶏は乾いた地面を自由に走り回れるように、平飼いにされている。また、雌鶏が安心して卵を産めるように巣箱が目立たない場所に配置されている。広範で快適な飼育場での養鶏は、鶏の健康維持に役立つだけでなく、生産される卵の味も向上する。3~4人程度の家族であれば、「鶏卵のパック詰め」イベントを体験できる。このイベントでは、養鶏の専門家から農場の養鶏について説明を聞けるだけでなく、養鶏場で卵を1パック収穫して持ち帰ることもできる。また、プリン好きなら、「手作りクリームプリュレ」のイベントに参加できる。卵を収穫してから、キッチンに移動して、香ばしさあふれるプリュレ作りを体験できる。

  好時節農場では、田んぼに出て農作業の楽しさを必ず体験してほしい。農場では毎年3月頃に田植えの体験イベントを随時開催している。大人も子供も裸足で田んぼに入って植えを体験できる。7月中旬には、田んぼの稲刈りイベントに参加できる。作業の後は、氷で冷やした農場自家製の米苔目 ( ミータイムー )を食べれば、暑さも吹っ飛ぶ。好時節休閒農場では、こうしたイベントを通して、旅行者が体を動かして汗を流し、温かい料理を食べたり、冷たい水を飲んだりすることで、農業の意義を体験し、素朴な生活を楽しんでもらうことを願っている。

📌【好時節休閒農場】
住所:桃園市大渓区康荘路三段225号
電話:(03)388-9689

田園の宝箱

  康荘休閒農業区には、土地から考えられる限りのあらゆる種類の作物を収穫できる宝箱のような有機農場がある。

  退職後、桃園大渓に移ってきた鐘(ジョン)さんは、農業経験が全くなかったにもかかわらず、五吉農場をオープンした。専門家でなかったことで、伝統的な栽培方法にとらわれずに、あらゆる種類の作物の試験的な栽培を開始できたのかもしれない。鐘さんはその後数年で、素人から優秀な専門家へと変貌し、康荘集落のツアーガイドを務められるまでになった。五吉農場は、その豊かな作物生産状況により、この地域で最も特徴的な農場となっている。

  農場では様々な種類の作物を栽培しているほか、養鶏や養蜂なども行っている。春になると、ムギワラギクが満開となり、青々とした田園にピンクの彩りを添える。農場では、春は大根やゴーヤ、夏はマンゴーやパッションフルーツ、秋は洛神、冬はミニトマトなど、四季を通して様々な収穫体験イベントを開催しているので、いつでも作物の収穫を体験できる。

  鐘さんは土地のもつ持続可能性を確信しているので、作物は環境に優しい方法で栽培している。また、この信念を受け継いでもらいたいと考え、旅行者が農園の食材を使って様々な農村メニューを手作りし、地元の旬の食材を食べることで参加者の心の中に持続可能性の種を芽生えさせることを目的とした食農教室を開催している。

📌【五吉農場】
住所:桃園市大渓区康荘路三段671巷31号
電話:0936-713843