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臺東縣

小さな鹿野での茶芸の復活

若くして故郷に戻った台東出身の南雁(ナンイエン)さんは、過去の産業モデルを復興させて観光業を活性化し、地元により特化した食事、産物、ツアーなどを企画して、旅行客に鹿野の茶文化を理解してほしいと願っている。例えば、1日または2日間の農業体験や地元のツアーでは、家族や友人のお土産として、地元の小規模農家が生産した米、蜂蜜、茶葉、乾燥果実、コーヒーなどの特産品をツアーのついでに購入できるようになっている。

茶摘み

茶摘みは、茶の里の文化を本当に理解するのに役立つ。茶の風味に大きな影響を与えるのは産地の気候で、特に紅烏龍茶は季節ごとに味が変わり、梅の香りがするもの、濃厚な甘みのあるもの、花の香りがするものなど、毎回製品の風味が異なる。また、鹿野の茶畑を散策すると、縱谷の感動的な景観も一望できる。
茶畑に入るには、台東の厳しい日差しをさえぎり、手早く作業できるように、笠、手甲(アームカバー)、かごなどの茶農家の標準装備を身につける必要がある。茶摘みの秘訣は一心二葉(いっしんによう)、すなわち先端の芽と2枚の柔らかい葉をやさしく摘む取ることである。作業は簡単そうに見えるが、たくさんの中から最高の茶葉を見つけるのは難しく、集中力が求められる。

利き茶

茶葉は、萎凋(いちょう)、揺青(ようせい)、揉捻(じゅうねん)、発酵、乾燥といった手のかかる工程を経る必要がある。お茶の良し悪しは前半の工程でほぼ決まり、茶葉の香りや風味は時間の経過とともに徐々に変化する。
室内で萎凋を行った後、お湯を沸かし、お茶を入れて、摘み取り時間で風味の異なるお茶を飲める。試飲では、それぞれ味と特徴が異なる、晨曦(明け方)、曜日(夕暮れ)、日中(正午)の3種類の紅烏龍茶が用意されている。

擂茶(レイチャ)の饗宴

鹿野は民族のるつぼで、当地にはブナン族やアミ族に加え、後年閩南人や客家も移り住んできた。ここには、短かったとはいえ、日本の植民地時代の歴史の一部も刻まれているので、鹿野の食文化は多様性に富んでいる。今回の昼食は客家風の擂茶(レイチャ)料理である。
擂茶料理の精神は、地元の食材を使用し、質素なメニューと単純な調理方法で、鹿野の田舎の味を提供することである。擂茶用の鉢に、落花生、ごま、各種の穀類を入れてからすりつぶし、温かいご飯にふりかけたメニューは、さわやかな客家料理の席によく似合う。

小さな鹿野での茶芸の復活
擂茶用の鉢に落花生やごまを入れて、よくすりつぶすと、いい香りが部屋全体に広がる
ドラゴンフルーツと紅烏龍の粉圓

ドラゴンフルーツと紅烏龍を使って作りしたカラフルな粉圓(フンユエン)は擂茶料理を食べた後の甘いデザートとなる。ドラゴンフルーツの果汁と烏龍茶を別々に加熱し、タピオカ粉を加えてから、2種類の生地をゆっくりこねて丸く光沢のある生地を作る。生地は細長く切り分け、さいの目に切ってから丸めて、小さくてカラフルな粉圓を作る。最後に、砂糖を加えたお湯に入れて浮き上がるまでゆでると、透き通ったきれいな粉圓が出来上がる。

小さな鹿野での茶芸の復活
ピンク色のドラゴンフルーツの生地は力を入れてこめると、徐々に丸くまとまる
小さな鹿野での茶芸の復活
ゆで終わった粉圓は鹿野の牛乳と紅烏龍茶と相性抜群である。口の中に入れると、牛乳のまろやかさと紅烏龍茶の高い香りに、粉圓の歯ごたえが加わって、鹿野の名産をすべて融合させた極上の一品を味わえる。
摘み取った洛神花(ローゼル)でジャムを手作り

洛神(ローゼル)の根は水に非常に弱いため、通常は水はけの良い砂地で栽培する必要がある。台東・花蓮・宜蘭地方は気候も適しているため、台東の農民たちは洛神の栽培事業に乗り出した。洛神の開花期は秋で、気温が下がりすぎると、花は枯れてしまう。畑が花で満開になるのは、毎年10月から11月にかけてである。食用部分は花びらで、色は鮮やかな赤で、花びらは肉厚である。
花の摘み取りは非常に簡単で、ハサミを使って、がくの下の枝につながる部分を切り取るだけである。花摘みは一度経験すると、やみつきになる。より大きく、より美しい花を求めて、満足できる花に出会うまで手を止められなくなるからである。

小さな鹿野での茶芸の復活
洛神花を摘み取るときは、小さなトゲでけがしないように、手袋を着用しなければならない。

最後のグループは、摘み取った花を大きな竹かごに入れて、種を取り除いていた。中が空洞の鉄の棒に萼(がく)を下からうまく差し込むと、種を取り出せる。力を加え過ぎると、花が壊れてしまうので、注意が必要だ。
次に、処理した洛神花を小さくちぎり、水で洗って水気を取ると、ジャム作りを開始できる。ジャム作りには我慢強さが求められる。花と砂糖を少しずつ鍋に入れて、弱火でゆっくり煮込むだけだが、火が強すぎるとすぐ焦げてしまう。洛神に砂糖を加えると、花から汁がしみ出て、赤くてコクのあるジャムになる。これは水を加えて冷たい飲み物にしたり、トーストに塗って食べたりして味わえる。

大地の食卓

地元のシェフが6人集まって、地元の産物、文化、地元への思いを結集させた感動的なメニューを提供してくれた。そのメニューは単に食欲を満足させるだけでなく、味覚を通して鹿野を理解するのに役立つ。食事が提供される間、シェフからそれぞれの料理にまつわる話を聞ける。

「GraceKitchen」からは伝統的な刺葱(カラスザンショウ)を使って、外側がサクサクで、内側がジューシーな豚肉のミートボール、「宏昌客家菜館」からは饗嚮(シャンシャン)台東のウコン麺に合う、紅烏龍茶でトロトロに煮込んだ滷肉(ルーロー)、「山谷裡的一家人」からは縱谷の味をテーブルの上で楽しめ、鹿野の風味がいっぱい詰まった(鶏をまるごとバケツに入れて薪で焼いた)柴燒桶仔鶏、「走一趟布農孩子的遊楽園」からは畑の食材を使った木豆の炊き込みご飯、「源縁園自然農場」からは自家製の作物を使ったタケノコの炒め物がそれぞれ提供された。こうしたメニューの饗宴により、様々な味わいの料理を満喫できただけでなく、鹿野の文化と民族の多様性を心から実感できた。