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山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道

山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道

苗栗県三湾郷の「雲霧嶺茶柚レジャー農園」の入り口には、「山に逢えば必ず客(客家人)有り、客に逢えば必ず茶有り」という、地元客家人の生活環境と寛大な精神を的確にまとめた二行の詩が掲げられている。
初期移民の主食は米だったため、平地は奪い合いの場となったが、客家人は台湾の山麓や丘陵地帯に居住した。その理由には主に2つの説がある。その1つは、客家人の来台は閩南人よりも遅く、人数も少なかったために、不毛の丘陵地域への定住を余儀なくされたという説で、もう1つは、移民は故郷の生活様式に最適な地域を自由に選んで家や畑を建立したに過ぎないので、いわゆる時期や強弱といった要素は関係ないという見方である。

山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
湾曲を重ねる山稜と川の流れが特徴となっている苗栗三湾の明媚な田園風景

どちらの理由が正しいとしても、現在、客家人の生活圏は、内山街道と呼ばれる台三線と絶妙に折り重なっている。特に、桃園・新竹・苗栗一帯を結ぶ、北部の桃園の平鎮、龍潭、関西、新竹横山、竹東北埔、峨眉から、苗栗の頭份、三湾、南庄、獅潭、大湖、卓蘭を通って、台中の東勢、石岡、新社に至る合計100 キロ以上の道のりは、山岳地帯の辺縁を巡り、香りの高い名茶、緑豊かな竹林、大型バイクのツーリングを楽しめる山道などの特徴を備え、近年では「台三線ロマンチック街道」と呼ばれるようになっている。
ここの苗栗三湾は嘉南平原や彰化平原ほど広大ではないため、米を大量には生産できないが、山岳地域の多様な気候および土質に加え、客家人の勤勉な気質により、不毛に思える丘陵および山岳地帯でも、関西の仙草、新埔の柿餅、三湾の梨、公館の赤ナツメ、大湖のイチゴ、卓蘭のブドウ、銅鑼の杭菊など多様な作物が生産されている。また、樟脳、オレンジ、桐花、陶芸品などで有名な地域も多く、季節ごとに異なる多種多様な草花、果物、お茶が堪能でき、無数の驚きに巡り会える。

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三湾の落羽松秘境は最近人気が急増し、旅行客が絶えない
フレンドリーな町ランキング第1位

上記の地域の中で、客家の気質が最も顕著な町の1つが苗栗の三湾である。三湾は苗栗県の最北端に位置し、新竹の北埔や峨眉との関係が深く、人口6,000人余りの小さな町で、人口の99%を客家人が占めている。
三湾という名前は、鹿場大山を源とし、途中の山や尾根を湾曲しながら流れる中港渓に由来している。内湾と二湾の集落を通過した中港渓がここで「第三の湾曲地点」を形成していることから、三湾と呼ばれるようになった。
初期の移民は、ここが不毛の斜面で、原住民の狩猟場に近いことから、定住に適しているとは考えなかった。客家の移民が入ると、川の第三の湾曲地域は実際には肥沃な沖積地であることが判明し、「肚兜(どうどう)角」と呼ばれるようになった。これはこの土地がセクシーだという意味ではなく、古代中国人が下着として着用していた「肚兜銭袋」に地形が似ているためだと考えられている。

山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
「山に逢えば必ず客有り、客に逢えば必ず茶有り」という二行の短い詩は、客家人の生活環境と寛大な精神を的確に説明している。

この銭袋が三湾の人々を失望させなかったのは確かである。美しい山々や河川は、多様の農産物だけでなく、永和山ダムの灌漑、湾曲を重ねる山や川、明媚な田園風景、豊かで穏やかな環境を生み出し、三湾の人々に満足や喜びをもたらしている。そのため、「天下雑誌」誌と台湾交通部観光局が2005年に開催したオンライン投票で、台湾に319箇所ある郷の中で「最もフレンドリーな町」ランキングで第1位を獲得した。
苗栗に遊びに来る旅行者はこれまで、南荘や大湖などに直行し、三湾に立ち寄ることはほとんどなかった。三湾は実際には水資源が豊富で気候もよいので、客家の代表的な産物である酸柑茶、東方美人茶、苦茶油、客家料理、三湾梨、緑竹筍(リョクチク)、冬季柑桔などの名高い産地となっている。また、落羽松祕境は最近人気が急増しており、三湾を訪れる旅行者も多くなっている。

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酸柑茶の生産には多くの時間がかかるが、時間というシェフにより最後には大きなサプライズが生み出される
甘酸っぱい味

三湾を訪れたら、「雲霧嶺茶柚休閒(レジャー)農場」の酸柑茶は外せない。酸柑茶は当初、客家人が正月に神卓に供えておいた虎頭柑(ことうかん)から作られていた。正月が終わると、捨てるのももったいないので、果肉を取り出した後に、金桔、仏手柑、レモン、茶葉を詰め替えてから、「蒸してから干す」という工程を何度も繰り返すと、保存性に優れた酸柑茶が誕生する。
当初、酸柑茶は客家人が家の中で喉を潤すための飲み物に過ぎなかったが、近年では、時間という最高のシェフにより、価値が急上昇しており、「1年で茶、3年で薬、7年で宝、30年で黄金になる」と言われている。環境と温度に注意して、よく保存すれば、酸柑茶の味と香りは一層深まる。その原理と熟成方法はプーアル茶と同じである。両方とも緊圧茶で、飲みたいときに、少量の塊を砕いて鍋で煮ると、何年も寝かせて熟成させた酸柑茶の何層にも重なるフルーツの酸味と甘さの魅力が弾ける。
雲霧嶺茶柚休閒農場では、虎頭柑の果肉の抜き取り、詰め替え、蒸し焼き、成型といった酸柑茶の全工程の見学に加え、昔ながらの懐かしい雰囲気、空中に漂うフルーティーな茶の香り、そして旅行客を歓迎する笑顔を体験できる。傍らに配置されたベーカリー機器や多数の表彰額がなければ、昔の素朴な客家人の村にタイムスリップしたような錯覚に陥るかもしれない。

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虎頭柑は酸味と渋味を帯びているので、客家人は酸柑茶を作るだけでなく、醤油につけて食べて酸っぱさと辛さを味わうこともある。
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赤い布の帯で結ばれた酸柑茶は、サプライズの喜ばれる贈り物として、人気が高まっている
美人の香り

三湾を代表するもう1つの名物は、永和山茶廠の東方美人茶である。
東方美人茶の最大の魅力は、ウンカが茶葉を食べる際に「唾液」を分泌することで生み出される独特の熟した果実の甘い香りである。東方美人茶は通常、一斤(約600グラム)あたり3000台湾元(以下、元)から入手できるが、高級品になると一斤で1万元以上することも珍しくない。東方美人茶は「シャンパンの香り」があり、口に含むと、シャンパンを飲んだときのようなフルーティーな甘さが口いっぱいに広がる。
お金をかけたくない人は、一斤あたり3~5千元の東方美人茶を購入するのがよういだろう。家に帰っても慌ててお茶を入れてはならない。東方美人茶は通常半年ほど寝かせると、甘い香りが引き立つ。シャンパンの香りを楽しむためには、通常5年以上寝かせる必要がある。特に、水出し茶を入れた後、炭酸ガスを注入してシャンパングラスに注いで飲むと、本物のシャンパンのようなエレガントでフルーティーな味わいを堪能できる。

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雲霧嶺茶柚休閒農場は虎頭柑のほかに、柚子(ブンタン)、レモンなどの橘類を使って、様々な味わいの酸柑茶を生産している
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永和山茶廠では、2箇所の有機茶園で東方美人茶を栽培している。また、虫の餌となるマメ科の植物を植えており、冬にはウンカもやってくる。

東方美人茶が高価である主な理由は、ウンカが噛んで唾液を分泌した小さな幼芽を摘む必要があるからである。それらの幼芽は小さすぎるので、指で摘む必要があり、機械や茶摘鋏は使用できない。また、1斤のお茶を作るのに4斤の茶葉が必要となる。一般的な烏龍茶園では、20人の作業者が一日150斤の茶葉を摘めるが、東方美人茶では40斤の茶葉を摘み取るのが精一杯である。さらに、短い収穫期、少ない生産量、高い人件費などが茶葉のコストを圧迫する原因となっている。
海塩が豊作の年は夏が暑かったことを意味するので、製塩業者は通常、自分が栄えても、他人が苦しむ豊作を望まない。東方美人茶の生産者も同様で、気温と湿度が上がるほど、ウンカの繁殖力が増し、茶葉の見栄えが悪くなり、茶農家の収益が上がるが、他の農業分野では害虫被害が広がる。東方美人茶の生産者には独自の生存哲学と美学がある。

山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
黒々とした酸柑茶はよく寝かせると、味と香りが一層深まる
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虫に喰われた幼芽は東方美人茶の最高の原料となる
冬のオレンジ狩り

この時期の三湾の山々はオレンジであふれる。「四季休閒農場」のオーナーは家族と共に10年以上前に台北からこの山岳地域に移住してきた。オレンジの栽培は、体を動かし、心を落ち着かせて、健康的に暮らすのに役立つだけでなく、椪柑(ポンカン)、砂糖橘(タチバナ)、美人柑、甜檸檬(スイートレモン)とった様々な種類のオレンジの木の緑で農園全体を覆うことができる。山の斜面のオレンジはすべて手で摘み取ってそのまま食べられる。
この季節の三湾では、永和山ダムの隣にある「金椿茶油工坊」で「東方橄欖油(オリーブオイル)」の製造工程を見学したり、落羽松祕境で映える写真を撮影したりできる。また、山城レストランを訪れて客家料理の様々な風味を体験するというのも日帰りツアーとしてはおすすめである。

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三湾の四季休閒農場のオレンジは冬にたわわに実るので、オレンジ刈狩りに最適である
台三線ロマンステラス街道の32のおすすめルート

台湾休閒農業発展協会では、旅行客に台三線ロマンステラス街道を体験してもらうと同時に、旅行業者のツアー作成に役立つように、広範な桃園・新竹・苗栗エリアの奥深くまでスタッフを派遣して、季節による変化や交通状況に配慮した台三線ロマンステラス街道の32のおすすめルート作成した。
これらの32のルートでは、春は桃狩りやホタル観賞、プラム狩りや陶芸、登山やきのこ狩りを楽しみ、アジサイの中で愛を叫び、5月の雪とも言われる油桐花(アブラギリ)を観賞できる。また、夏にはたわわに実るぶどう、澄み渡る金針花(ワスレナグサ)、黄金色に輝くゴールデンシャワーツリーの花びら、蜜のように甘い梨、秋には満開の杭菊や木彫り工作、にぎやかな花畑、収穫を待つ柿、仙草のさっぱりとした味わいを楽しめる。さらに、冬は三湾の酸柑茶を体験するのに最も適切な季節で、オレンジ狩り、体を癒やすショウガ料理、客家の擂茶(レイチャ)、大湖のイチゴ、寒さを恐れずに山全体に広がる真っ赤な桜を堪能できる。
台三線ロマンステラス街道の32の観光ルートは以下に紹介されている:https://goo.gl/YF4CQW

山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
苗栗三湾の人口の99%は客家人で、本場の様々な客家料理が味わえる
山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
金桔醋溜魚(魚の金桔醋炒め)には冬の三湾の甘酸っぱい味が詰まっている
山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
客家式豚足、柔らかくて香ばしい。
山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
地元の植物を使って色付けされた野菜餃子には伝統的な味わいを残されている。
山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
台三線ロマンステラス街道には季節によって異なる表情があり、夏はゴールデンシャワーツリーの花びらがロマンチックな風情を醸し出す。
山に逢えば必ず客有り フルーツの香り漂う台三線街道
秋から冬にかけての台三線が霧に包まれることが多く、美しい景色が展望できる。